独文学専攻

German Literature

概要

独文学専攻が研究対象としているのは、ドイツ語圏の広義の文化です。時代は中世から現代まで、内容はドイツ語学理論、文学理論、文化理論、テクスト講読、口語・文語表現演習、中世文化研究などで、カリキュラムが構成されています。伝統的な研究法から最新の研究動向にいたるまで柔軟に目配りしつつ、優れた研究者を育成し、高度な専門知識を身に付けた人材を社会へ送り出すことを目指しています。

修士課程においては、徹底的にドイツ語と学問的思考法の習熟を目指します。文学系、文化系、言語学系、哲学・思想系の各テクストの読解と討論、学問的議論のための実践的な口語演習、修士論文作成のためのドイツ語による論文執筆訓練などを課しています。また、少人数のクラスでは教員と学生の間で密度の高い授業が行われます。後期博士課程においては、主に博士論文執筆のための授業が行われ、指導教授による指導と並行して自主研究を進めることとなります。独創的な発想や発見を根底に据えた、個性的な博士論文の作成が期待されます。博士学位の取得に関しては、本専攻の定めた規定に準じて審査が行われるので、別途資料を請求していただきます。

また、慶應義塾大学はドイツ学術交流会の一般考査による留学や、ベルリン自由大学、ボン大学、ドレースデン工科大学、ザールブリュッケン大学、デュッセルドルフ大学、ジーゲン大学、ライプツィヒ大学、アーヘン工科大学などとの交換協定による留学生派遣を行っています。オーストリアやスイスの大学へ留学する学生もいます。独文学専攻とドイツ語圏主要大学との連携の強化により、絶好の留学環境にあると言えるでしょう。

以上のように、本専攻では多岐にわたる研究分野、母語話者によるドイツ語能力の陶冶、少人数制による個別指導の徹底、ドイツ語圏の諸大学との連携強化と留学制度の整備などを柱に活動しています。学生の進路は、公務員や一般企業への就職のほか、研究者となる者も数多くいます。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 川島 建太郎
    Kawashima, Kentaro
    教授

    独文学専攻
    現代ドイツ文学・思想,メディア理論

    ドイツ語圏の文学と思想を,メディア史の観点から考察しています。メディアは,文学や思想をそもそも可能にしている歴史的アプリオリです。印刷術からアナログメディアをへてデジタルメディアにいたる歴史は,時間と空間のあり方や記憶のあり方を根底から変容させました。そこから言語表現や思考がどのように影響を受けたのかを観察し,記述しようと試みています。

    主要著作
    • Autobiographie und Photographie nach 1900: Proust, Benjamin, Brinkmann, Barthes, Sebald. Bielefeld (transcript), 2011.
    • Christoph Ransmayrs Arbeit am Zeugen – Jean Améry und der Roman ""Morbus Kitahara"". In: Beiträge zur österreichischen Literatur. Jg. 33 (2017), S. 12–23.
    • Recht und Literatur in Benjamins Essay ”Franz Kafka”. In: Neue Beiträge zur Germanistik. Bd.16, Heft 1. 2017, S, 47–61.
    • Metamorphosis as Origin—Koji Yamamura’s Short Animation ”Franz Kafka’s A Country Doctor”. In: Arts(MDPI) 8 ( 2 ) 4. 2019. https://www.mdpi.com/2076-0752/8/2/54
    • 「法のメディア論−コルネリア・フィスマンとともにゲーテ『若きヴェルターの悩み』を読む」,縄田雄二(編)『モノと媒体の人文学』岩波書店,2022年,192-219頁.
  • 粂川 麻里生
    Kumekawa, Mario
    教授

    独文学専攻
    近現代ドイツ文学、文化史、スポーツ史、ポピュラー音楽、怪獣映画

    ゲーテが、20世紀の思想家たちに与えた影響の研究を出発点に、「言語」、「形」、「色」、「音」、「時間」、「身体」、「自然」といった諸概念の関り合いについて考察しています。それと関連して、アーカイヴ学、ポピュラー文化・音楽論、怪獣映画論、サッカーやボクシング等の近代スポーツとドイツ独自のトゥルネンをめぐる文化史も研究しています。

    主要著作
    • 『サッカーのエスノグラフィーへ』(共編著、社会評論社 2002)
    • ゲーテ『ファウスト』(訳著、作品社 2022)
    • 『西洋教育思想史』(共著、慶應義塾大学出版会 2016)
    • 『Pazifikismus.Poetiken des stillen Ozeans』(共編著、Könighausen 2018 )
    • 『サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆き』(翻訳、三修社、2012)
  • 田中 愼
    TANAKA, Shin
    教授

    独文学専攻
    ドイツ言語学,言語理論

    ドイツ語を中心とした言語研究を行っています。
    自然言語は,「数十の音を組み合わせて無限のものを表象するしくみ」として,驚異的な「普遍性」というべきものを備えています。この普遍性には,構造的なもの(人間が種として与えられているもの)という側面を持つ一方で,他方で機能的(それが何のために備わっているのか)に決定されているという特徴を持っているわけですが,私は,特に後者の機能面を中心に,ドイツ語や日本語,その他の言語を比較,対照することを通して解明することを目指しています。

    主要著作
    • Grammatische Funktionen aus Sicht der japanischen und deutschen Germanistik. (共編著,Helmut Buske,2017)
    • ノモスとしての言語 (シリーズ ドイツ語が拓く地平 3). (共編著,ひつじ書房,2022)
    • 講座 ドイツ語学. 第一巻. ドイツ語のシンタクス. (共著,ひつじ書房,2014)
    • Deixis und Anaphorik: Referenzstrategien in Text, Satz und Wort. Linguistik – Impulse und Tendenzen 42. (Walter de Gruyter,2011)
    • The ”passive“ voice in Japanese and German: argument reduction and argument extension. in: Linguistics 44-2. 319-342. (共著,Mouton de Gruyter,2006)
  • 独文学専攻
    演劇学・ドイツ演劇

    ドイツや日本の舞台作品を「上演分析」する演劇学の方法を模索しています。最近は演劇を新しい悲劇論や「不在論」、越境文化論から捉え直しています。かたわら演劇学の理論を応用して、日常生活や社会における身体・(自己)演出・パフォーマンス性のあり方を「演劇性」の観点から探究しています。演劇性は、演劇学だけでなく、哲学、政治哲学、社会学でも議論されていますが、この議論も考察対象にしています。

    主要著作
    • 『文化を問い直すーー舞台芸術の視座から』(共編著、彩流社、2021)
    • 『在と不在のパラドックス――日欧の現代演劇論』(三元社、2016)
    • 『ドラマトゥルクーー舞台芸術を進化/深化させる者』(三元社、2010)
    • Theater in Japan(共編著、Theater der Zeit, 2009)
    • 『現代ドイツのパフォーミングアーツ』(共著、三元社、2006)