大学院文学研究科の学生は、多様な学問領域に応じて、自ら課題を見出し、探究しています。そして、全員がその成果を論文としてまとめ、学位を取得することをめざしています。

学生紹介

  • 「○○好き」で刺激しあう知

    梶村紗里奈

    英米文学専攻
    修士課程1年(2023年現在)

    皆さんは、歴史は好きでしょうか。私は好きです。

    今は英米文学専攻で学んでいる私ですが、学部生の頃は西洋史学専攻の所属でした。そこで出会ったのが、250年ほど前のイギリスを生きた「歴史好き」であるジョーゼフ・ストラットです。彼は自国の歴史の研究を趣味とし、その成果をまとめていくつかの本を出版しました。彼の作品を読んでいると、人間の好奇心や情熱といったものの凄さに驚かされます。ストラットの本業は版画を彫る職人で、けっして裕福ではなく、歴史研究だけにかかりきりになれるような生活状況ではありませんでした。それでも、「歴史が好き」という気持ちを出発点に、人は何万字もの文章を書くことができるのです。

    現在私は、学部生時代に学んだ歴史学の知識を活かしつつ、文学研究の視点を軸にストラットが後世に残したレガシーを探る調査を進めています。ストラット作品は、彼の版画職人としてのキャリアを反映し、挿絵がとても多いのが特徴です。美術史や図像学の知見も援用し、ストラットが19世紀以降のイギリスの歴史観にどのような影響を与えたのかを探っていきます。

    文学研究科はとてもおもしろい学び舎です。所属している院生それぞれが深く関心のある分野をもつ、いわば「○○好き」の集まりです。一見自分の研究とは関係のなさそうなテーマでも、よく聞いてみると思わぬ発見があったりします。逆に、自分の知っていることを話してみると、それが誰かのひらめきにつながることもあるのです。この学びあいの醍醐味は、何にも代えがたいものです。皆さんは、私に何を聞かせてくれますか?

  • 学問の至高性

    宗政孝希

    仏文学専攻
    博士課程2年(2023年度現在)

    私は現在博士課程の学生として、毎日よく遊びよく学んでいます。20世紀フランスの思想家ジョルジュ・バタイユにおける主体や存在をめぐる思考をテーマとして、のびのびと研究しているところです。バタイユの思想は哲学や文学、芸術や政治や宗教などさまざまな分野に及んでおり、研究対象として飽きることがありません。

    さて、仏文学専攻では修士課程の1年目に、文学や哲学、言語学などの講義を幅広く受講することになり、研究のための視野が大きく広がります。その後は主に各自の研究が中心となりますが、シンポジウムや研究会といった機会に自分の専門外のことに多く触れるのは楽しいものです。ちなみに、慶應は研究の環境が整っているとよく聞きます。それはおそらく本当です。

    ところで、私の研究は一体何の役に立つのでしょうか。それはまだ知りませんし、むしろこちらが聞きたいくらいです。しかし、哲学でも詩でも小説でも言語でも、何かに興味を抱いて知りたいと思ったら、純粋な遊び心をもって探究してみればいいのではないでしょうか。勉強は辛いものではなく、それ自体が深い悦びであるはずです。研究とは、有用性の奴隷として働くことではなく、知と非知の中での遊びにおける真理の思索であり、そこにこそ学問の至高の価値があります。そして、遊びを純粋に肯定するのが人間というものです。

    では、文学研究科の自称宣伝大使としてこの文章を書いているので、最後に一言。文学や哲学、歴史、芸術、図書館・情報学などにご関心のある方は、ぜひ慶應の文学研究科へ。

  • 図書館情報学へのアプローチ:研究と実践

    渡邉里菜

    図書館・情報学専攻 情報資源管理分野
    修士課程1年(2022年度現在)

    私は平日の日中は都内の大学図書館で働きながら、社会人大学院生として慶應で研究に取り組んでいます。特に大学図書館における利用者対応の質について関心を持っています。

    大学図書館で働く前は、クレジットカード会社で勤務していました。やりがいはありましたが、常に心のどこかで「この先も続けていきたい仕事ができているだろうか」と悩んでいました。

    自分の興味や将来の姿について考え尽くした結果、私は図書館業界で活躍できる人材になりたいという結論に至りました。しかし、図書館司書の資格はあるものの、図書館業界ではまったくの素人です。そんな自分が実力をつけるには、現場での実践に加え、図書館情報学の体系的な理解、そして関心のある事柄について自ら研究することが必要だと考え、大学院へ進学することを決意しました。

    社会人大学院生としての生活は想像以上に大変でした。仕事の合間に課題を仕上げなければならず、時に苦しいこともあります。それでも、専攻の皆さんと意見を交わし励まし合うことで、エネルギーが湧いてきます。また、第一線で活躍されている先生方のアドバイスはとても鋭く、そのうえで研究に行き詰った時には親身になって相談にのってくださり、様ざまな場面で助けていただいています。

    慶應には、想像以上の素晴らしい環境がありました。2年間を充実させるべく、更に研究に力を入れたいと考えています。

    何かを始めるのに「遅い」ということはないと思います。図書館情報学を研究するならば、ぜひここで挑戦していただきたいと感じています。

  • 史料と向き合う大学院生活

    土肥野秀尚

    史学専攻 西洋史学分野
    後期博士課程3年(2022年度現在)

    私は史学西洋史学分野で近世スペイン社会史を専門に研究しています。修士課程では、スペイン帝国の首都かつ宮廷都市として発展を遂げたマドリードに到来した出稼ぎ労働者の中でも、数量的に重要であったイベリア半島北西部の農民を事例に、「貧困申告書」という特殊な遺言書を用いて名もなき出稼ぎ労働者(水売り、リネンの行商人、粉ひき・パン職人、食料調達人など)が築いていたネットワークについて研究しました。

    博士課程ではテーマを変え、1766年にバスク地方ギプスコア県を中心に広がった食糧暴動期の裁判文書と同時期の史料を交差して、ミクロヒストリーの方法で近世バスク地方の共同体について研究しています。また、研究と同時に、シマンカス総合文書館でインターンをしたり、アラバ県歴史文書館で史料のカタログ作成をしたりと、自分の研究に直接関係のない史料を読む「寄り道」をしながら歴史研究者として必要な幅広い知識も学んでいます。

    学部生の4年間だけだと研究地域の史料に触れることなく卒業の日を迎えてしまい、「西洋史を学んだ」という実感が得られないかもしれませんが、史料と向かい合う西洋史研究の醍醐味は大学院から始まります。いくつもの文書館に足を運び、史料を探し、それを正確に読み解き、さらにその他の史料と交差して、生き生きと過去を再構成するのは、相当の好奇心と忍耐、幅広い分野の知識と豊かな想像力を必要とし、骨の折れる仕事ですが、研究の過程で人生を豊かにしてくれる多くの気づきと出会いがあります。そんな実り多い研究プロセスを楽しみたい方は、大学院進学を選択肢の一つとして考えてみてください。

  • 世界へつながる研究の場

    相磯尚子

    史学専攻 東洋史学分野
    後期博士課程3年(2022年度現在)

    私は史学専攻東洋史学分野でオスマン帝国の歴史を学んでいます。特に海軍について、停滞期と言われる17世紀に、実際にどのような人々によって構成されていたのか、どのように活動していたのかを明らかにしようと研究に取り組んでいます。

    東洋史学では早い段階で「東」と「西」に分かれます。「東」は中国史、「西」はイスラーム世界史の授業を中心に選択し、本人の希望に沿って学べるようになっています。「西」の魅力は、東南アジアや南インドから、中央アジア、中東、地中海世界まで幅広い地域の知識が深まることです。所属している学生の専門内容も多様なので、広い視野で研究に従事することができます。研究テーマも専任教員の先生方と相談しつつ本人が決めるので、自由に研究ができることが強みだと思います。

    大学院の授業では英語やトルコ語の研究論文講読に加え、オスマン語やアラビア語の史料講読もあり、歴史研究のためのトレーニングを積むことができます。本塾図書館に所蔵されている中東史関連の書籍は日本でも屈指の豊富さで、理想的な研究環境が整っていると感じます。

    専攻では対象とする地域へ留学に行くことが推奨されていて、私は外部の奨学金を得て2年半ほどトルコ共和国に留学していました。実際に現地へ赴くことで視野がぐっと広がりますし、これまで史料で曖昧に読み流していた部分にも別の意味があることに気づけるようになりました。

    色々なことに挑戦したいと思う人には特にお勧めの研究の場です。

  • 使用していた道具から化粧の歴史を読み解く

    岩浪雛子

    史学専攻 民族学考古学分野
    後期博士課程1年(2022年度現在)

    私は近世考古学を専門としており、江戸時代から近代にかけての紅化粧の普及過程について、紅化粧道具の出土様相から研究しています。学部卒業後は、企業博物館へ学芸員として一度就職しましたが、自分の取り組んできた研究をさらに深めたい、またそのために専門的なスキルを伸ばしたいと考え、大学院への進学を決めました。現在は、博物館や埋蔵文化財に関連する仕事に幾つか携わりながら、三田で学んでいます。

    大学院の授業では、研究と密接に関わる分野を集中的に勉強しつつ、様々な方から助言を頂くことができます。例えば、私が所属する民族学考古学分野の大学院ゼミは、文化人類学や形質人類学などの他分野、あるいは同じ考古学でも異なる時代や地域を専門とする先生や大学院生が参加しており、多角的な視点から研究を見直す貴重な機会となっています。

    また、慶應では多様な資料を所蔵しており、それらを研究に利用するための環境が整っています。私自身、慶應の敷地内から出土した陶磁器を実際に手に取って観察し、経験豊富な先生方から手厚い指導を頂きつつ、製作技法や使用方法などを研究しています。

    歴史研究はただ一つの正解はなく、そのために悩むこともあります。しかし、誰も目を向けてこなかった新たな視点から歴史を読み解けたときには、純粋に楽しいと感じることも少なくありません。そんな瞬間に立ち会える機会や環境が揃っている慶應の文学研究科を、ひとつの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。

  • 研究の手がかりを掴む

    浅井 万優

    国文学専攻 国文学分野
    修士課程2年(2021年度現在)

    私は、日本の文学、特に幕末から明治時代に書かれた漢文紀行文について研究しています。これらを読み解くことによって、当時の人々がどのような自然観・風景観を持ち、それがいかに文学作品に著されたのかを明らかにしたいと考えています。

    大学院の授業や、院生が自主的に参加する勉強会では、受講者の研究発表に基づいて、毎回活発な議論が交わされます。自分の専門とは異なる分野の議論の中にも、思わぬところに研究のヒントが隠れていたりします。自分の研究に行き詰まったときは、いったん周りに目を向けて、積極的に議論に参加したり、先生方や先輩方の研究に対する取り組み方を観察したりすると突破口が見えることがあります。私にとって、大学院の授業や勉強会は、研究の手がかりを得ることができる貴重な場になっています。

    自身の文学研究に新しい視点をもたらしてくれるのが、書誌学の知見です。慶應には、古典籍を対象に扱う斯道文庫という研究機関があります。斯道文庫の授業では、書誌学を専門にする先生方のもとで、専門的な知識や技術を習得しつつ、豊富な古典籍を実際に手に取って研究します。文学・書誌学の両面において高い水準の研究を行うことができる環境は、慶應ならではの魅力です。

    文学研究科に入学してから、学問的な交流の幅が大きく広がり、また、扱う資料の幅も大きく広がりました。そこで得た様々な研究の手がかりが、研究を豊かなものにしてくれると確信しています。

  • 三田で人文科学に打ち込むこと

    野村 航平

    史学専攻 日本史学分野
    後期博士課程3年(2021年度現在)

    私は日本中世史を専門にしており、具体的には鎌倉幕府と寺院社会の関係を明らかにすべく日々研究しています。学部時代を通じて、研究対象それ自体への興味もさることながら、テクストに沈潜した史料解釈の方法や、史料批判や史料操作といった歴史学の技術的な側面にも魅力を感じ、そうした学問の営みに加わりたく大学院進学を決意しました。

    大学院のゼミでは、史料講読や修士・博士論文執筆へ向けた研究報告が行われており、少人数ならではの手厚い指導を受けています。ゼミ以外でも、たとえば斯道文庫設置の講座では歴史資料に実際に触れながら書誌学的知識を身に付けられ、ここで得たノウハウは史料調査にあたってダイレクトに有用なものとなっています。また年に一度開催される三田史学会大会は貴重な研究報告の場であるとともに、史学系の他領域を専攻する大学院生・研究者と交流する機会にもなっています。

    研究は時に地道で孤独な営みであると感じることも多いのですが、そうした研究を支える図書館や研究室などの充実した環境が整っていることが三田キャンパスの何よりの魅力だと感じます。その一方で、三田キャンパスは人文諸科学に携わる人々が集う場でもあり、私自身ここで出会った多くの方に導かれつつ研究生活を送っています。こうした豊かな環境において粛々と人文科学に打ち込む期間は、どんな人にとっても、生涯にわたりかけがえのないものとなるのではないでしょうか。

  • 研究を深化させる理想的な環境

    植村 遼平

    美学美術史学専攻
    修士課程2年(2020年度現在)

    私は現在、美学美術史学専攻の中でも音楽学の分野で研究しており、特に20世紀フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンの作品研究に取り組んでいます。学部時代から、音楽を歴史的・理論的に理解しようとするこの学問に魅力を感じ、様々な講義や研究会を通して、基礎的な概念や方法論を学んできました。それにつれ、次第に明らかになった研究課題を、より専門的に掘り下げたいと思うようになり、大学院への進学を決めました。

    大学院の授業では、文献講読や学生の研究発表が少人数で行われ、活発な議論がなされています。また週に1回、研究科の先生方と学生全員が集まる場が設けられており、他分野の研究発表を通して、自らの研究を見直す良い機会となっています。様々な方法論や着眼点に触れることは、より柔軟かつ論理的に課題と向き合う為には意義深いことではないでしょうか。そして慶應では、音楽学関連の図書・楽譜等の蔵書が極めて充実しており、研究に理想的な環境が整っていると実感します。

    このように手厚いサポートが受けられる環境があって、私は音楽学という、学術研究として奥行きのある領域に挑むことができています。常に多角的な視点を提供してくれること、ここに総合大学で音楽を研究するメリットがあると確信しています。

  • 教員と院生が築き上げる研鑽の場

    石川 就彦

    中国文学専攻
    後期博士課程2年(2020年度現在)

    学部・修士課程を通して中国文学専攻で中国古典文学を中心に学んできました。特に明代白話小説『水滸伝』を主な研究対象とし、版本間のテキストクリティークを通じて表現技法の分析を行っています。現在はその一端として「泣き」「笑い」「怒り」といった感情表現に焦点を当て、文学批評の精神及び技法の発展の研究を進めています。

    研究資料や専門書、先行研究の入手は研究生活の生命線と言えます。例えば私のような研究手法では、多くの貴重な版本に目を通す必要があります。その点では、慶應の図書館及び各研究室には各専門図書・データベースが非常に充実しており、どの分野を研究するにも申し分の無い環境と言えます。

    大学院の授業の多くは少人数で行われ、穏やかな雰囲気でありながら毎度熱い議論が展開されています。授業外でも、教員と院生あるいは院生同士の交流は研究分野や所属専攻の垣根を越えて頻繁に行われ、先生方や先輩方の手厚く熱心なご指導の下、自身の研究を進めていくことができます。また、文学研究科文学系5専攻で構成される「藝文学会」が毎年開催され、他専攻の教員や院生と交流する機会にも恵まれています。

    博士課程も2年目となった今、自分ひとりで研究を進めるのは容易ではないと実感しています。様々な人との交流を通じて自らを研鑽し、より専門的かつ多角的な視点から研究を行うことを目指す方にとっては、慶應の文学研究科は理想的な場ではないでしょうか。

  • 「あらゆる挑戦と好奇心を認める環境」

    永野 圭土

    哲学・倫理学専攻 倫理学分野
    修士課程2年(2019年度現在)

    大学1年生のときに履修した倫理学の授業をきっかけに、私は哲学・倫理学の世界に足を踏み入れました。そして、基礎概論や原典講読、ゼミなど、色濃い講義を履修するにつれて、世の中で議論されている多くのことが、哲学・倫理学を源泉にもつような素朴な疑問や問題意識に直結しているのではないかと考えるようになりました。学部時代にはこうした哲学・倫理学を学ぶ楽しさを深め、将来は大学院に進学し、行為論の領域でこの好奇心をひとつの研究として形にしていきたいという思いが強まりました。

    大学院の授業はほとんどが少人数制で、毎回の授業では教員や学生の枠を超えたさまざまな議論が飛び交っています。また、私の所属する研究科では月に1回、研究科の先生方と学生全員が集まって、学生の研究状況を発表し、相互にブラッシュアップしていくような場があります。その際には、多角的な視点から自分の哲学的問いを俯瞰できるので、毎回多くの収穫を得ています。大学院での研究は孤独なイメージがあったのですが、慶應では研究についての悩みや疑問を熱心に問う機会が本当に多いと実感しています。

    私は現在、大学院の授業と並行して教職に関する科目を履修しており、将来的には中高の教員免許を取得することを考えています。一般的には両立しがたいとされる挑戦的な履修を組んでいる私ですが、こうして安心して研究生活が送れるのも大学の手厚いサポートがあってのことであり、学問をする上で慶應の文学研究科は理想的な場だと考えています。

  • 課題に挑戦するための理想的な研究の場

    阿久津 達矢

    図書館・情報学専攻
    後期博士課程2年(2019年度現在)

    私は学部、修士課程をとおして社会学を専攻し、主に医療の領域を対象とした研究に取り組んできました。博士課程に進学するにあたり、図書館・情報学を選択した理由は、そうした研究領域に取り組むことにより視野を広げられるのではないかと考えたからです。専攻を変えるということは私にとっては大きな挑戦でしたが、それを可能にしてくれたひとつの要因は慶應の環境にあったと考えています。

    慶應の大学院では、専門的かつ幅の広い授業が高い水準で展開されており、私のように異なる専門分野で学んでいた者でも研究に取り組むための基盤を得ることができます。また、研究会や大学院生同士での議論をとおして、きめ細やかな指導や研究を進めるうえでの有益な示唆を得ることができるということも慶應の大学院の魅力のひとつです。

    私にとって、現在の研究課題に挑戦するにあたり、慶應は理想的な環境であると思っています。これから大学院に進学し、自らの研究課題に取り組みたいと考えている皆さんにとっても慶應の文学研究科はよい選択肢のひとつになるのではないでしょうか。

  • 教育現場での実用を重視する研究の場

    呂 宜庭

    国文学専攻 日本語教育学分野
    修士課程2年(2018年度現在)

    大学(学部)の時に選んだ副専攻をきっかけに、私は日本語の世界に入りました。その時周りには日本語に興味を持っている友人も多くいましたが、日本語の難しさにより諦めた人がほとんどでした。そのため、教育学部で身につけた専門知識を活かし、より多くの人に受け入れられる教授法を研究したいと思い始め、大学院への進学を決めました。将来は効率的な教授法を使い、日本語を学ぶことの醍醐味を伝える日本語教師になりたいと思っています。

    私が所属している研究科の授業の大半は、修士1年の時に履修することになっていて、2年に進級すると研究に専念することができます。大学院の授業では、言語学の理論等の学習のみならず、教育現場でよく出る質問についても先生やクラスメートと一緒に探究します。その過程により、常に新しい問題点を発見でき、研究の楽しさが味わえます。また、慶應には別科へ日本語を学びに来た外国人留学生が多くいるため、彼らのチューターとして、実際に日本語学習者と向き合う機会があります。学習者を指導することを通して、日本語学習の難しさを理解するとともに、学習者に分かりやすい指導方法について考える、貴重な経験を積むことができます。

    日本語教育学分野は少人数で構成され、先生と学生の距離が近いです。研究について相談したい時は、先生からアドバイスをいただくこともできます。慶應は研究の環境が整っていて、自分のペースで研究を進めることができる理想的な場だと思います。

  • 挑戦するために最適な環境

    新居 達也

    英米文学専攻
    後期博士課程3年(2018年度現在)

    修士課程以来、私は15世紀英文学を研究しています。15世紀の文学はかつて英文学史の中で過度に軽視されてきました。近年、欧米でこの時代の英文学の見直しが行われるようになりましたが、日本においては未だ専門とする研究者の数が多くはありません。そのため、大学院に入るにあたり現在の研究対象を選択したことは私にとり一つの挑戦でした。その挑戦を可能にしてくれた一つの大きな要因は、慶應の環境にあったと考えています。

    慶應の大学院では、専門的かつ幅広い授業が開講されており、年に数回は海外の第一線で活躍する研究者を招聘した講演やセミナーが開かれているため、私のようにマイナーな分野を専攻する院生でも手厚く、レベルの高い指導を受けることができています。

    また、院生の層が厚いことも慶應の利点の一つであると言えます。院生による自主的な勉強会は毎月のように催され、学会発表や論文投稿などのアウトプットの機会に際しては院生間でのピアレヴューを行うことが慣例化しているなど、院生同士で切磋琢磨できる環境が作られています。

    私にとって、現在の研究課題に挑戦するにあたり慶應は最適な環境でした。これから大学院に進学し、それぞれの研究に挑戦してみたいと考えている皆さんにとっても、慶應は良い選択肢の一つになると確信しています。

  • 全力で学べる環境

    小出 智子

    仏文学専攻
    修士課程2年(2017年度現在)

    ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』を研究しております。13歳の時に、中高の演劇部が上演していたミュージカルを拝見したことが研究のきっかけです。マリユス・ポンメルシーを演じていらした先輩の男装姿が、私の初恋でした。その後原作を読み、更に多くの魅力を感じこの本の虜となりました。そして一生この本と生きていきたいと思い、研究者を目指し現在に至ります。

    学部時代は様々な分野の一般教養科目も履修しておりましたが、大学院ではほぼ全ての授業がフランス文学に関するものです。どの授業においても自身の研究と繋がる発見がございますので、毎日が非常に刺激的です。

    元は娯楽として楽しんでいた本に対し客観的な視点を持たなければならないことや、非常にハイレベルなフランス語のお授業を大変に感じることもございますが、自分が心からしたいと望んでいる研究を全力でできる環境にいられることは、本当に恵まれたことだと思います。

    文学研究は、数学のように綺麗に答えが出るものではありません。その分、疑問点を深めようと思えばいくらでも深められる面白さがあります。大学院で研究をさせていただくということは、その面白さを毎日実感することができるということだと思います。

  • 環境を最大限利用し、
    研究のリズムを見出す

    髙谷 遼平

    哲学・倫理学専攻 哲学分野
    後期博士課程2年(2017年度現在)

    現在私は週に一度しか授業に出席していません。つまり、ほとんどの時間を自由に過ごしていることになります。大学院生、特に博士課程の学生は同じような生活をしている人も少なくないと思います。大学院での研究生活において、このような時間をどう使うのかが非常に重要です。

    多くの学生は、勉強会や学会発表、論文投稿などでリズムをつけています。例えば私は、時期によっても変わりますが、週三度の勉強会と数ヶ月に一度の学会発表を通して論文を少しずつ形にしています。しかし、勉強会や学会は最小限にしてひたすら知識を増やしたり、逆に多くの勉強会に参加して研究の糸口を探すといった方法もありうるでしょう。結局のところ、どう過ごすのかは人それぞれであり、試行錯誤しながら自分に合った生活リズムを見つける必要があるということです。

    ただ、研究生活に不安を感じた時は、迷わず周りを頼ってください。慶應は先生や先輩との距離が近いうえ、他大学との交流も非常に盛んです。もし求めるなら、様々な角度からアドバイスがもらえるはずです。どれだけ研究に打ち込めるのかは自分次第ですが、そのための方法は一つではありません。慶應は、皆さんに様々な選択肢を与えてくれる場、「研究生活をつくるための環境」が整っている場です。自分自身の研究のリズムを見出すために、慶應という環境に身を置いてみてはいかがでしょうか。

  • 日々の「気づき」

    ウエルズ ヤン

    史学専攻 西洋史学分野
    修士課程2年(2016年度現在)

    私は19世紀のロシアの都市化について研究しています。広大なロシアという農業国家の歴史において大きな役割を果たした農村と共に、都市の果たした役割とは何だったのだろうという疑問を持ったことがこのテーマを選んだ動機でした。

    学部生のときは1917年のロシア10月革命をテーマとしており、現在取り組んでいることと一見全く異なることに関心を持っていました。しかし、学部生のときの取り組みに不足を感じ大学院に進学した後、さまざまな文献や人々と接することで今まで見えてこなかった歴史の多面性に気づき、よりミクロ的な視点からロシアの特性とその成り立ちを捉えなおしたいと思うようになりました。

    大学院に入ると周りの学生が少ない分、関わりを持つあらゆる人とそれぞれ濃い時間をすごすようになります。自分の研究と関連性がないと思えるような議論でも、思わぬところで自分の関心と結びついたり見えていなかったものが見えたり、大学院生活のすべてが自分の見識を豊かにしてくれます。その様な議論を経てもう一度自分のテーマと向き合ったとき、見えてくるものがそれ以前とでは大きく変わってきます。日々の生活の中で気づかされる物事の多さに大学院生活の醍醐味を私は感じています。

  • 「知」を探求できる環境

    栗田 くり菜

    独文学専攻
    後期博士課程2年(2016年度現在)

    私は現在、博士課程に在籍して「現代ドイツの『移民文学』」を研究しています。「マイノリティ」であるトルコ移民が、どのように異国であるドイツでアイデンティティを形成しているのか、ドイツに住むトルコ移民が発表した文学作品を題材に検討を進めています。移民文学という「他者」の声を聞き読み解くプロセスは、今後の日本における移民についての議論でも少なからず役立つのではないかと考えています。

    大学院は、個人が自由に使える時間が多いというのが特徴ですが、だからこそ時間をどのように有意義に使うのかを考える必要があります。講義やゼミでは自発的な学習が求められますし、研究会や学会で多くの研究者と切磋琢磨をすることも重要です。また、研究年報等へ論文を掲載することもできるようになります。勿論、教授との距離もより近くなりますので、研究に迷ったときは教授から適切な指導を受けることが出来ます。

    私にとって大学院の大きな魅力の1つは、様々なバックグラウンドを持った仲間と議論したり研究したりできることです。私のように慶應で修士号を取得後、数年間民間企業で働き戻ってきた人もいますし、学部から直接進学した人、企業に働きながら通学する人、子育てが一段落して戻ってきた人など様々です。和気藹々とした雰囲気の中、ドイツ文学や文化に情熱を注ぐ仲間達と議論することは非常に刺激的で勉強になることばかりですし、この環境は慶應の大学院ならではないかと思います。

    大学院進学を検討されている方は、ぜひ慶應の門をたたいてみてください。皆さんと共に勉強できることを楽しみにしています。