民族学考古学分野

Archaeology and Ethnology

概要

民族学考古学分野では、フィールドワークに基づいて集積された一次資料を利用して、過去の社会や民族文化の歴史的再構成を行います。主な研究指導対象分野としては、日本の先史考古学、歴史考古学、西アジア考古学、太平洋地域の考古学・民族学、動物考古学、ジオ考古学、考古学研究法、自然人類学などが挙げられます。また、考古・民族資料コレクションの形成をめぐる博物館学・博物館人類学的研究も行っています。

大学院教育としては、担当教員による個別の論文指導および教員、学生全員が参加する演習授業による研究発表および討論が中心となっています。教員はそれぞれ専門のフィールドを持っていますので、各フィールドの調査に参加し、野外調査の実践および分析、報告の仕方を学ぶことができます。また、学会等における発表も積極的に行われています。

本分野では、長年の調査で蓄積された豊富な考古・民族・古人骨資料が保管されていますので、それらをもとに研究を進めることも可能です。総合大学の研究科として、他学部、他専攻、諸研究所と共同でアッカド語、ヘブル語などの特殊言語や自然科学的手法、統計的解析手法を習得することもできます。最終的には、独自の研究を仕上げることで、研究に必要な技術を兼ね備えた総合的リサーチ・デザインを描ける研究者の養成を目指しています。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 安藤 広道
    Ando, Hiromichi
    教授

    民族学考古学専攻
    日本考古学・博物館学

    身近にある考古学資料や物質文化資料を分析対象とし、その成果を大きな歴史学的枠組みのなかに位置付けていくというのが、研究の基本スタンスです。慶應義塾には、三田キャンパス、日吉キャンパスを中心に、先史時代から現代に至る多種多様な資料が存在しており、研究する意義が見いだされたものなら何でも、時代を問わず研究対象にしています。現在は、日吉や三田の近現代、特にアジア太平洋戦争に関わる建造物の調査・研究にエネルギーを注いでいます。こうした研究の成果を軸に、日吉や三田という場に集う、さまざまな立場の人々の歴史的言説を絡み合わせたパブリックヒストリー的活動を展開したいと思っています。

    主要著作
    • 『慶應義塾大学日吉キャンパス一帯の戦争遺跡の研究Ⅱ』(慶應義塾大学民族学考古学研究室、2020:https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO10007001-00000005-0001)
    • 『鹿屋戦争アーカイブマップ(公開版)』(2023公開:https://stroly.com/viewer/1638713501)
    • 『弥生時代ガイドブック』(新泉社、2023)
    • 「日吉、鹿屋、そして沖縄:地下壕がつなぐ歴史」(『日吉台地下壕:大学と戦争』高文研、2023)
    • 「パブリックヘリテージとしての戦争遺跡」(『文化遺産の世界』Vol.42、2023:https://www.isan-no-sekai.jp/report/9327)
  • 河野 礼子
    Kono, Reiko
    教授

    自然科学部門
    自然人類学、人類進化学

    人類の進化史について、主に歯牙の形状に着目して研究を行っています。近年は骨や歯の形状の3次元デジタル分析手法を活用したさまざまな共同研究も進めています。

    主要著作
    • 河野礼子(2021)猿人とはどんな人類だったのか? ―最古の人類. 『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』(井原泰雄・梅崎昌裕・米田穣編), 東京大学出版会, pp23-40.
    • Takai M, Khin-Nyo, Kono RT, et al. (2021) New hominoid mandible from the early Late Miocene Irrawaddy Formation in Tebingan area, central Myanmar. Anthropological Science, 129: 87-98.
    • 河野礼子・岡崎健治・仲座久宜・徳嶺里江・片桐千亜紀・土肥直美 (2018) 3次元デジタル復元に基づく白保4号頭蓋形態の予備的分析と顔貌の復元. Anthropological Science Japanese Series, 126: 15-36.
    • 河野礼子 (2018) 自然科学における3次元プリンターの活用事例. 慶應義塾大学日吉紀要 自然科学, 64: 31-45.
    • Suwa G, Kono RT, Simpson SW, Asfaw B, Lovejoy CO, White TD (2009) Paleobiological implications of the Ardipithecus ramidus dentition. Science, 326: 94-99.
  • 佐藤 孝雄
    Sato, Takao
    教授

    民族学考古学専攻
    動物考古学、民族考古学

    人と自然の関係史を読み解くために、遺跡から出土する動物遺体の分析に取り組んでいます。文化と自然を包括的に捉え、第四紀の歴史を通観することに努めつつ、北海道や北部本州、シベリアでフィールドワークを重ねています。

    主要著作
    • Animals and their Relation to Gods, Humans and Things in the Ancient Wold. (共著. Springer VS, 2019)
    • 『人と動物の日本史1 動物の考古学』(共著. 吉川弘文館, 2008)
    • Rediscovery of the oldest dog burial remains in Japan. (Anthropological Science, vol.123, no.2, 2015)
    • Paleoenvironment of the Fore-Baikal region in the Karginian interstadial: Results of the interdisciplinary studies of the Bol’shoj Naryn site. (Quaternary International, vol.333, 2014)
    • 「中近世アイヌのシカ送り儀礼」(『動物考古学』30, 2013)
  • 民族学考古学専攻
    オセアニア島嶼世界のジオ考古学、歴史人類学、博物館人類学

    南太平洋オセアニアや日本の八重山諸島をフィールドに、考古学と地球科学が協働するジオ考古学の手法を用いて、島嶼世界の景観史のなかに人と自然の「絡み合い(entanglement)」を読み解いてきました。近年は、クック諸島プカプカ環礁の調査プロジェクトを進めてます。また、18世紀中頃-20世紀初頭の植民地期に収集されたオセアニア造形物の歴史人類学的・博物館人類学的研究にも挑戦しています。

    主要著作
    • 「島嶼:島景観にみる自然と人間の営み」『ようこそオセアニア世界へ』昭和堂(2023)
    • 「日本に渡ったウリ像-小嶺コレクション」『世界歴史19:太平洋海域世界』岩波書店(2023)
    • 「民族資料を精読する-旧オランダ領ニューギニアの犬形木製彫像-」『国立民族学博物館研究報告』46巻4号(2022)
    • Session organizer, "Multi-disciplinary studies of ‘islandscape’ as a meshwork" in "Anthropology and Geography: Dialogues Past, Present and Future" held (Royal Institute of Anthropology, London, 2020)
    • 『アイランドスケープ・ヒストリーズ―島景観が架橋する歴史生態学と歴史人類学』(編著、風響社、2019)
  • 渡辺 丈彦
    Watanabe, Takehiko
    教授

    民族学考古学専攻
    旧石器考古学、日本古代史、文化財行政学

    東北日本を中心とした旧石器時代の石材原産地遺跡や洞穴遺跡の調査・研究を通じて、過去の人々と周囲の自然環境との関わりを明らかにすることが主要な研究テーマです。さらに時代は新しくなりますが、古代瓦磚の研究を通して古代都城・官衙の成立・発展過程を考えることも研究テーマの一つです。また、遺跡の発掘調査や研究の成果を、一般の方々にわかりやすく伝えるための埋蔵文化財保護行政の仕組み作りにも関心があります。

    主要著作
    • 奈良貴史・渡辺丈彦・澤田純明・澤浦亮平・佐藤孝雄 編「青森県下北郡東通村 尻労安部洞窟-2001〜2012年度発掘調査報告書-」(六一書房, 2015)
    • 「石器は海峡を越えたか-本州最北端出土旧石器の系譜に関する一試論-」(史学, 84-1~4, 2015, 三田史学会)
    • 「日本列島旧石器時代における洞穴・岩陰利用の可能性について」(奈良文化財研究所創立60周年記念論文集 文化財論叢IV, 国立文化財機構奈良文化財研究所, 2012)
    • 「日本列島 石の流通史-石材原産地遺跡の視点から」(特集 日本列島 石の流通史,月刊文化財, 548, 第一法規, 2009)
    • 阿部祥人・岡沢祥子・工藤敏久・渡辺丈彦編「お仲間林遺跡の研究-1992年発掘調査-」(慶應義塾大学民族学考古学研究室, 1995)