哲学分野

Philosophy

概要

哲学分野は、文学研究科に設置されて以来一貫して西洋哲学を追求し、日本の哲学研究の中核を担ってきました。哲学は最も古い学問ですが、その長い伝統と先端の両方を兼ね備えているのが本分野です。哲学のすそ野は広大で、すべてをカバーすることはできませんが、伝統と現代の二点に研究の焦点を定めた点に特徴があります。スタッフは古典研究2名、現代研究5名と、重点的な配置になっています。院生は、修士課程と後期博士課程にそれぞれ十数名が在籍し、他大学や他学部からの入学者も珍しくありません。

本専攻の伝統の一つは古代ギリシア・中世の古典研究にあり、プラトン、アリストテレスから中世哲学まで幅広い領域をカバーできる、国内の大学では珍しい充実した陣容となっています。そこでは古代ギリシア語やラテン語が飛び交い、哲学の原点にある諸問題が議論されます。もう一つの伝統は、二十世紀以降の現代哲学の研究です。そのなかでは論理学や言語哲学、科学哲学、現象学といった新しい潮流はもちろんのこと、形而上学や認識論などの古くからの領域もアップデイトされ、分野の垣根を越えた探求が日々進められています。

大学院の授業は、修士課程では修士論文、後期博士課程では博士論文という目標のために、必要な語学や哲学の基本ツールを修得し、さらにそれを磨く場となっています。また、学生は学内外での研究に積極的に参加し、学内における三田哲学会の例会、MIPS(三田哲学会の哲学・倫理学の合同研究集会)での発表、機関誌『哲学』への論文執筆のほか、各々の専門と関連する全国学会での発表、論文投稿など、活動の機会は大きく広がっています。他方で、さまざまな研究プロジェクトも展開されており、教員だけでなく多くの学生もその研究の一端を担う形で参加しています。

また、専任教員と学生の関係にも良き伝統が生きています。相互の信頼を基礎に日々の研究が進められていることはもちろん、授業以外での共同研究、さらには人間的なふれあいも随所に見られます。学生同士での勉強会も多く、相互啓発が活発に行われています。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 荒畑 靖宏
    Arahata, Yasuhiro
    教授

    哲学専攻
    言語と心の哲学、解釈学

    私の現在の研究の柱は、二つです。(1) G・フレーゲの論理哲学、前期ウィトゲンシュタイン哲学、ハイデガーの解釈学的現象学を、いわゆる「形而上学的内部主義」と哲学的言語の可能性の問題をめぐって比較・架橋すること、(2)アリストテレス、カント(『判断力批判』)、ハイデガー、ガダマー、ウィトゲンシュタイン、ライル、アンスコム、マクダウェル、M・トンプソンらを、知識論・言語哲学・行為論における「フロネーシスの伝統」とも呼ぶべき哲学的系譜として描きだすこと。

    主要著作
    • 『世界を満たす論理 —— フレーゲの形而上学と方法——』, 勁草書房, 2019年.
    • 『これからのウィトゲンシュタイン——刷新と応用のための14篇』, 荒畑靖宏・山田圭一・古田徹也[編著], リベルタス, 2016年.
    • 『世界内存在の解釈学 —— ハイデガー「心の哲学」と「言語哲学」』春風社, 2009年.
    • Welt – Sprache – Vernunft, Ergon Verlag, Würzburg, 2006.
  • 哲学専攻
    西洋中世哲学

    西洋中世のキリスト教思想家トマス・アクィナスの思想を存在論や認識論を中心に勉強しています。英米系分析哲学の手法を用いて古典的な問題に新たな光を当てることが面白いと思っています。その他、英米系現代認識論や分析系宗教哲学の分野にも関心を持っています。

    主要著作
    • 『現代認識論入門 —ゲティア問題から徳認識論まで』(勁草書房、2020)
    • ジョン・グレコ、上枝美典訳『達成としての知識 —認識的規範性に対する徳理論的アプローチ』(勁草書房、2020)
    • 「トマスにおける神の知の不変性と時間の認識」(『中世思想研究』58号、2016)
    • 「トマスの神はエッセのイデアか」 (『中世思想研究』55号、2013)
    • 「現実性としてのエッセ再考」 (『アルケー 関西哲学会年報』21号、2013)
  • 柏端 達也
    Kashiwabata, Tatsuya
    教授

    哲学専攻
    行為論、現代形而上学

    行為とは何か、合理性とは何か、心とは何か、言語とは何かといった問題や、伝統的な形而上学の諸問題に、いわゆる分析哲学の手法を使って取り組んでいます。と同時に、それらの異なる問題圏を結びつけるルートを探っています。また最近では、価値や人生といった問題にも関心をもっています。

    主要著作
    • 『自己欺瞞と自己犠牲』(勁草書房、2007)
    • 「幸福の形式」(戸田山和久・出口康夫編『応用哲学を学ぶ人のために』世界思想社、2011)
    • 「自己欺瞞」(信原幸弘・太田紘史編『シリーズ新・心の哲学Ⅲ 情動篇』勁草書房、2014)
    • 『コミュニケーションの哲学入門』(慶應義塾大学出版会、2016)
    • 『現代形而上学入門』(勁草書房、2017)
  • 金子 善彦
    Kaneko, Yoshihiko
    教授

    哲学専攻
    西洋古代哲学

    西洋古代哲学で扱われる「魂」「自然」「徳」「理性」等の概念を中心に、歴史的側面と哲学的側面の双方からその意義を探ることを研究テーマにしています。そのため現在は、アリストテレスの動物学をはじめとする自然哲学とその根底にある規範性の問題に焦点を当て、それをめぐる諸問題の考察を進めています。

    主要著作
    • 「アリストテレスのファンタシアー概念と虚偽の現われ」, 『西洋古典学のアプローチ』, 晃洋書房, 2021年.
    • 「動物の知性 ―『動物誌』に見るその位置づけと「擬人化」の問題 ―」, 『理想』第696号, 理想社, 2016年.
    • アリストテレス全集第八・九巻『動物誌』上・下(共訳・解説), 岩波書店, 2015年.
  • 斎藤 慶典
    Saito, Yoshimichi
    教授

    哲学専攻
    現象学、西洋近・現代哲学

    私たちのこの現実は「現象すること」によって成り立っているのではないでしょうか。このことの内にあらゆる「存在」が含まれる仕方を可能なかぎり正確に記述すること、他方で、いかなる意味でも「現象しない」ものの問題をどう考えたらよいのかを追求すること、この二点に集中しています。

    主要著作
    • 『「実在」の形而上学』(岩波書店、2011)
    • 『生命と自由: 現象学、生命科学、そして形而上学』(東京大学出版会、2014)
    • 『「東洋」哲学の根本問題:あるいは井筒俊彦』(講談社、2018)
    • 『私は自由なのかもしれない:〈責任という自由〉の形而上学』(慶應義塾大学出版会、2018)
    • 『危機を生きる――哲学』(毎日新聞出版、2021)