倫理学分野

Ethics

概要

倫理学分野は、哲学分野とともに長い歴史を有しています。哲学とは別に倫理学を専門分野として設けている大学院は全国でもわずかしかなく、その中でも、本分野は最大規模のスタッフを擁しており、日本における倫理学研究の拠点の一つになっています。

倫理学分野のスタッフがカバーしているのは、近現代のドイツ、フランス、イギリス、アメリカの思想です。発足以来、この領域に重点を置きながら、スタッフをバランスよく配しています。また、現代の倫理学は規範倫理学・メタ倫理学・応用倫理学に大別されますが、本分野では、規範倫理学はもちろん、メタ倫理学や応用倫理学の研究・教育も行っています。さらに、宗教哲学、社会哲学など、倫理学と密接に関連する領域についても、長年にわたり、研究と教育を行っています。

スタッフの具体的な専門分野は、カントの倫理学、現代フランスの思想、近代イギリスの倫理思想、医療倫理学、メタ倫理学などです。他の領域については、毎年、専門の研究者を講師として招いており、倫理学について広く研究することができます。

倫理学分野は少人数教育をとくに重視しています。例年、修士課程には8名程度、後期博士課程には4名程度の大学院生が在籍しており、それぞれの問題関心に従って専門研究を進めています。修士課程では、研究者としての基礎を養い、優れた修士論文を執筆することを目標としています。後期博士課程では、学会や研究会での口頭発表や論文執筆などを通じて、研究者としての能力を高め、研究成果を博士論文としてまとめることを目標にしています。修了者の多くは研究者の道に進みますが、大学院で得た専門知識を活かして社会で活躍する人も数多くいます。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 荒谷 大輔
    ARAYA, Daisuke
    教授

    倫理学専攻
    現代フランス思想、精神分析

    近現代のフランス哲学、とりわけジャック・ラカンの精神分析の思想的可能性を深堀りする研究を行ってきました。 ラカンの精神分析は、さまざまな人々の欲望が行き交う中で、私たちが「世界」と呼ぶような認識の枠組みが立ち上がる論理を明らかにしていますが、それはまさに、私たちがいま「当たり前」と考える「世界」の構造をあらためて考え直す契機を与えてくれます。『資本主義に出口はあるか』や『使える哲学』などの著作では、歴史的に積み重ねられた様々な言説によって無意識のレベルで私たちを規定する思考の枠組みを明らかにすることを試みました。 そうした理論的な解明をもとに、現在では「贈与経済2.0」の社会実装を試みています。「贈与経済2.0」については、拙著『贈与経済2.0』や下記ウェブサイトをご覧ください。 https://heart-land.io

    主要著作
    • 『贈与経済2.0:お金を稼がなくても生きていける世界で暮らす』(翔泳社、2024)
    • 『ラカンの哲学:哲学の実践としての精神分析』(講談社メチエ、2018)
    • 『資本主義に出口はあるか』(講談社新書、2019)
    • 『使える哲学:私たちを駆り立てる五つの欲望はどこから来たのか』(講談社メチエ、2021)
  • エアトル ヴォルフガング
    Ertl, Wolfgang
    教授

    倫理学専攻
    倫理学史、形而上学、現代倫理学

    I am interested in topics situated at the intersection of metaphysics and ethics, mainly, but not exclusively in Kant. These topics include the multifaceted debate on free will and determinism, the question of objectivity and realism in ethics, Kant’s transcendental idealism and his approach to moral philosophy, as well as the conception of natural practical law in Aquinas and Scotus. Currently, I am working on a monograph on the relevance of Luis de Molina's thought for Kant’s theoretical and practical philosophy. Molina is a 16th century Scholastic philosopher and theologian, and in my opinion, Kant's revolutionary ideas about free will are to a large extent inspired by this remarkable predecessor of his.

    主要著作
    • Kants Auflösung der“dritten Antinomie”: Zur Bedeutung des Schöpfungskonzepts für die Freiheitslehre(Freiburg, München: Alber, 1998)
    • David Hume und die Dissertation von 1770: Eine Untersuchung zur Entwicklungsgeschichte der Philosophie Immanuel Kants(Frankfurt/M.: Lang, 1999)
    • “Ludewig”Molina and Kant's Libertarian Compatibilism, in Matthias Kaufmann and Alexander Aichele (eds), A Companion to Luis de Molina (Leiden, Boston: Brill 2014), pp. 405-445.
    • The Guarantee of Perpetual Peace (Cambridge: Cambridge University Press 2020).
    • Free Will, Foreknowledge and Creation: Further Explorations of Kant’s Molinism. In: Kantian Review 28 (2023), 497-518, DOI: https://doi.org/10.1017/S1369415423000444
  • 柘植 尚則
    Tsuge, Hisanori
    教授

    倫理学専攻
    イギリス倫理思想史

    倫理学史、倫理学理論、応用倫理学の分野で研究を行っています。倫理学史では、近代イギリスの倫理思想の歴史を辿り、その全体像を捉えることを、倫理学理論では、現代の倫理学における主要な理論を検討し、その可能性と限界を示すことを、応用倫理学では、経済における倫理的な問題について考察し、その原因を明らかにすることを試みています。

    主要著作
    • 『良心の興亡:近代イギリス道徳哲学研究』(ナカニシヤ出版、2003/増補版、山川出版社、2016)
    • 『イギリスのモラリストたち』(研究社、2009)
    • 『プレップ倫理学』(弘文堂、2010/増補版、2021)
    • 『プレップ経済倫理学』(弘文堂、2014)
    • 『近代イギリス倫理思想史』(ナカニシヤ出版、2020)