図書館・情報学分野

Library and Information Science

概要

1967(昭和42)年に設置された図書館・情報学専攻は、情報システム、情報メディア、情報検索を研究の三つの柱としています。

情報システムは、情報を扱う組織全体を含めた広い概念で、方法的対象として図書館を扱います。図書館は資料を収集、組織化、保存、提供する機能を持ち、書誌コントロールや情報サービスなどの観点からも捉えることができます。また、図書館とその設置機関との関係をめぐる法的および経営的な問題、提供されるサービスと利用者コミュニティとの関係をめぐる社会的、心理的問題、そして、図書館が社会にもたらす経済的、文化的、教育的効果などが研究テーマになります。

情報メディアは、欧米の情報学の中で発展した学術コミュニケーション研究と計量書誌学に加え、学術情報システムの問題を含めた独自の研究領域を持っています。メディアではなく人間の認知に焦点を当てる情報探索行動研究も長年の研究実績があります。最近は、デジタルメディアの特性やそれらの利用者に関する研究、組織やウェブにおける人々の行動の理解、情報メディアを含めた知識の共有・創造・蓄積・サービスのデザインを考える研究も行われています。

情報検索は、情報検索理論から情報組織化、データベース、情報検索システムまで、検索技術に特化した工学系のアプローチとは異なる全体的な観点から研究課題を扱います。最近では特に、サーチエンジンの高度化、検索実験における評価方法、大量の文書の自動分類などの研究課題で成果をあげています。また、メタデータ、統制語彙、分類法等とそれらの組み合わせからなる情報組織化/情報資源組織化の高度化にも研究実績があります。

図書館や情報メディアの隣接領域である書誌学や出版、メディア論やメディア研究などの課題に取り組むことも可能です。

修士課程の入学者は例年少人数であり、指導教授だけでなく、専攻の他の教員、修了生も含め和やかな雰囲気で研究をしていくことが可能です。修了後は、国立国会図書館や大学図書館などへの就職、情報通信関連企業への就職、後期博士課程への進学が多数を占めます。

後期博士課程では、博士学位の取得を目的とした論文作成指導が中心となります。査読のある学会誌に論文を発表した後、学位論文検討会で発表を積み重ねることを通じて、学位論文を完成させるように指導しています。

また、2006(平成18)年4月からは後期博士課程の科目を夜間にも開講しています。図書館や情報サービス関連企業にお勤めの方が夜間の科目のみを履修し、後期博士課程の単位を修得することも可能です。博士課程修了後は、大学や研究組織の教員、研究職を目指す方が大部分です。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 安形 麻理
    Agata, Mari
    教授

    図書館・情報学専攻
    書誌学、書物史、図書館・情報学

    西洋の初期の活版印刷術、特にグーテンベルク聖書を中心とするインキュナブラ、写本と刊本の関係、書物に対する考え方や読書の様式の変化などに関心があり、デジタル画像を用いたグーテンベルク聖書の研究を継続して行っています。また、資料保存、デジタルアーカイブ、貴重書のデジタル化、デジタル人文学にも興味を持っています。

    主要著作
    • Agata, M.; Agata, T. Statistical analysis of the Gutenberg 42-line Bible types. The Papers of the Bibliographical Society of America. 2021, 115(2), p.167-183. (DOI: 10.1086/713981)(共著)
    • 安形麻理. "利用者による特殊コレクション資料の撮影の許可:北米の研究図書館における動向". 図書館は市民と本・情報をむすぶ. 池谷のぞみほか編著. 勁草書房, 2015, p. 52-60.
    • 安形麻理ほか. 日本の図書館におけるマイクロ資料の保存の現状 : 質問紙による大学図書館と都道府県立図書館の悉皆調査から. 日本図書館情報学会誌. 2014, vol. 60, no. 4, p. 129-147.(共著)
    • 安形麻理. "聖書に見る本文の構造の視覚的な提示方法". 貴重書の挿絵とパラテクスト. 松田隆美編.慶應義塾大学出版会, 2012, p. 103-123.
    • 安形麻理. デジタル書物学事始め:グーテンベルク聖書とその周辺. 勉誠出版, 2010, 224p.
  • 図書館・情報学専攻
    エスノメソドロジー、情報行動、知識の社会学、サービスデザイン

    人々のさまざまな営みを、営みに関わる人々の視点から理解することにこだわるエスノメソドロジーという学際的なアプローチをとって研究をしています。営みにおける実践を、人々が想起もしくは共有する知識を実践から切り離さずに理解することで、組織や集団における知識の共有や創造、継承などの問題を考察することに関心があります。これまで図書館や病院、企業などでフィールドワークを行ってきました。それぞれの場での実践を理解することが、知識のマネジメントに関わる課題を繊細さをもって捉えることになり、それが組織での仕事の仕方やサービスやテクノロジーのデザインについて現場の方々と共同で考える研究にもつながっています。

    主要著作
    • 『エスノメソドロジー・会話分析ハンドブック』(共編著,新曜社, 2023)
    • 『図書館は市民と本・情報をむすぶ』(共編著,勁草書房,2015)
    • 現象学にインスピレーションを受けたエスノメソドロジーの方向性:三人称現象学を中心に. 現象学と社会科学, 2021, no.4, 25-42.
    • Hybridity of hybrid studies of work: Examination of informing practitioners in practice. Ethnographic Studies, 2020, no.17, 22-40.
    • Social Distribution of Knowledge in Action: The Practical Management of Classification. In J.Strassheim, H.Nasu (Eds.), Relevance and Irrelevance. De Gruyter. 2018, p. 161–186.
  • 図書館・情報学専攻
    情報検索、テキストマイニング

    情報検索の理論・技術全般に関心を持ち、特に、統計学的な方法によって検索性能の向上を目指す研究を行ってきました。その結果、言語横断検索(検索質問と文書とで使用言語が異なる場合の検索)に関して、いくつかのアルゴリズムを提案しました。最近では、テキストマイニングの技術を応用した文書の自動分類について研究しています。具体的には、大規模な文書集合に内在する階層的な主題構造を抽出するためのクラスタリング技術や、ニューラルネットワークを活用した主題件名の自動付与などに取り組んでいます。

    主要著作
    • K. Kishida. Technical issues of cross-language information retrieval: a review. Information Processing and Management, Vol.41, 2005.
    • K. Kishida. High-speed rough clustering for very large document collection. Journal of the American Society for Information Science and Technology, vol.61, 2010.
    • 岸田和明『図書館情報学における統計的方法』(樹村房、2015)
    • K. Kishida. Uncomplicated procedure for thesaurus mapping: Use of stemming, edit distance and vector matching. IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-IFAT-131, 2018.
    • N. Kadowaki and K. Kishida. Empirical comparison of word similarity measures based on co-occurrence, context, and a vector space model. JISTaP, Vol.8, No.2, June 2020, p.6-17.