慶應義塾大学大学院文学研究科は、1951年に創設されて以来、西脇順三郎、井筒俊彦といった著名な研究者の伝統を継いで、人文科学全般の研究に大きな貢献をしてきました。哲学、史学、文学、図書館・情報学の4領域を中心に広く人文科学全体を覆う最高水準の専門研究を国際的に展開すると共に、幅広い教養と深い専門性を備えた研究者の養成を行うことで日本文化の発展に貢献し、さらに、アート・マネジメント、情報資源管理、日本語教育学の分野に見られるように、高度職業人の養成機関として大きな役割を果たしてきました。

修士課程及び博士課程の授業の大半は少人数の演習科目で、学生は、数多くの開講科目の中から指導教授のアドバイスを受けつつ、関連分野への視野と関心を保持しつつ、各自の専門的問題意識を発展させるための履修計画を立てることが可能です。
論文指導を担当する文学研究科委員の教員以外にも、文学部所属の専任教員の多くが大学院科目を担当しており、多方面からの親身な指導体制を確立しています。さらに慶應義塾全体の取り組みである「スーパーグローバル事業」の一環として、海外の著名な研究者を招聘して博士課程の学生の副指導教員として指導、先端的知見の教授など、教育内容の高度化のための取り組みも行っています。

博士論文は、各専攻が定めた手順に即して、論文の執筆と完成が可能になるように、さまざまな支援体制のもとで進められるように配慮されています。論文の審査には学外の専門家が副査として加わり、審査過程も透明性を有し、博士論文としての品質の高さが保証されています。そうして完成を見る博士論文は年間10本を越え、それらは国内外で次々と公刊されています。
豊富な教員による学生の研究テーマに密着した丁寧な指導と高度職業人の養成は、文学研究科の一番の特色であり、少人数セミナーと個別的な論文指導を通じて、学生は専門研究を進め、その成果を国際的に発信することが可能になっています。

文学研究科が基盤を置く三田キャンパスは、言語文化研究所、附属研究所斯道文庫、福澤研究センター、アート・センター、日本語・日本文化教育センターなど、人文科学分野のさまざまな研究所があり、文学研究科はこれらの研究機関と授業や研究において連携しています。さらにリーディング大学院プログラムをはじめとして、学内の他の研究科とのデュアルディグリープログラムが、領域横断的な研究を志す学生に用意されています。こうした教育研究面における緊密な協力体制は、教育内容の幅を広げ、課題対応・問題解決の能力を涵養し、現実対応型の人材を養成するとともに、複数の領域を横断する独創的な研究を生み出すべく支援を行っています。

三田キャンパスには、国内有数の蔵書を誇り、和漢洋の貴重書を数多く所蔵する慶應義塾図書館や斯道文庫があり、これらの機関の協力のもとで歴史資料や貴重書を活用した研究をし、またそのための方法論を学ぶ環境も整っています。海外の研究機関との交流も活発で、海外の大学との共同セミナーや著名研究者による講演会などは、頻繁に開催されています。

慶應義塾大学には、充実した奨学金制度があります。各種の経済支援型の奨学金に加えて、優秀な成績や研究実績を挙げた学生を対象にした研究助成型の奨学金は、新入生と在学生に分けて各種用意されており、修士・博士両課程在学中の全期間にわたってさまざまな学内奨学金への応募が可能です。また、文学研究科では、海外の大学院への留学を推奨しており、慶應義塾全体の数多くの交換留学プログラムに加えて、ドイツのハレ大学との間での修士課程ダブル・ディグリー・プログラム、ロンドン大学キングス・コレッジへの短期留学プログラムなど研究科独自の制度を整備し、また私費で海外へ留学する大学院生のための支援制度も設けています。

文学研究科に属する多くの研究者が文部科学省の科学研究費、学内の研究助成を受け、多様な共同研究プロジェクトを展開しています。文理融合型の「論理と感性のグローバル研究センター」は、代表例の一つです。そのような共同研究プロジェクトには大学院生も主要な若手メンバーとして参加しています。大学院生はプロジェクトに加わることで、その分野の最先端の研究に触れることができ、研究を進める上で大きな刺激を得ています。

歴史的視野と文化的多義性を尊重する人文科学の研究は、混迷多様化する現代においてますます重要性を増しています。人間は過去と他者から学ぶことによって、未来に対して展望を持ち対策を考える存在です。人間の知的営み、文化的交流、環境との関わりを多面的に研究し深く理解し、そのための方法論を確立してゆくことは、人間文化への大きな貢献であり、文学研究科はそのための最適な環境を提供することを目指しています。