概要

慶應義塾における美学美術史学の歴史は、1892(明治25)年に開講された森鷗外の「審美学」にまで遡ります。当初は美学および西洋美術史から出発しましたが、その後、日本・東洋美術史、西洋音楽史、音楽が関わる舞台芸術一般を研究領域に加え、近年は芸術運営、芸術支援などの研究・教育にも積極的に取り組んでいます。

すなわち本専攻には、理論研究(美学・芸術学)、歴史研究(美術史・音楽史・舞台芸術史・現代芸術論)、実践研究(アート・マネジメント)の3つの柱があります。2005(平成17)年度には、この3つの柱を下記の2つの分野に集約し、より充実した教育が行える体制を整えました。なお院生は、在籍する分野と異なる分野に設置された科目を一定の範囲内で履修し、修了に必要な単位とすることが可能です。

アート・マネジメント分野は、芸術経営において必要とされる諸領域の知識、先導的なスキル獲得とプロフェッショナル養成を目標とした分野です。大学卒業後3年以上が経過し、実務経験を有する社会人が対象となります。授業内容は、非営利組織論、組織理論と組織行動論、マーケティング、ファンドレイジング、文化政策、芸術関連法規、ケース・メソッドなどから構成され、専任者のほか各領域で活躍する講師が教育にあたります。現在、開設されているのは修士課程のみで、社会人の学生のために平日夜間と土曜に集中して開講しています。修了には修士論文の作成が必須です。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 後藤 文子
    Goto, Fumiko
    教授

    美学美術史学専攻
    西洋美術史

    ドイツ近代美術を中心として研究に取り組んでいます。いま進めている研究は、モダニズムにおいて美術・建築・庭園が複層的に接合する様相を、クロス・ディシプリナリー(美術史/植物生態学)の立場から解明する庭園芸術学の試みです。

    主要著作
    • 「近代デザインにおける「統合」と「規格」:タイポグラフィから建築、そして庭園へ」、『DNP文化振興財団学術研究助成紀要』Vol. 1, 公益財団法人DNP文化振興財団、2018年11月、82-91頁。
    • Ostwalds Farbenlehre und die Farben von Pflanzen. Uber Farbentafeln im Gartenbau, in: Mitteilungen der Wilhelm-Ostwald-Gesellschaft e. V., 22.Jg. 2017, H. 2, 10-30.
    • 「近代園芸学とオストヴァルト色彩論」、『美学』248号、美学会、2016年6月15日、61-72頁。
    • 「近代芸術と共感覚:「共働する感覚」への総合芸術的問いかけ」、石田紗衣編『共感覚から見えるもの:アートと科学を彩る五感の世界』(共著)、勉誠出版、2016年、125-151頁。
    • 「造園植栽家フェルスターをめぐる「〈近さ〉の交信」「〈遠さ〉の交信」:モダニズム建築と天体観測と気象芸術学」、『Booklet (慶應義塾大学アート・センター研究紀要)』22号[特集:コスモス:いま、芸術と環境の明日に向けて](編集主担当)、慶應義塾大学アート・センター、2014年3月、115‐144頁。
  • 遠山 公一
    Toyama, Koichi
    教授

    美学美術史学専攻
    西洋美術史

    主に15世紀イタリア初期ルネサンスの彫刻および絵画を研究しています。絵画においては、祭壇画や祈念画など機能的な見方、および近世におけるイリュージョニスティックな陰影のシステム導入と中世以来の象徴的な光と影との間に生じる相克に関心があります。彫刻においては、台座や素材の象徴性に興味があります。いずれも美術作品と場所や観者との関係が本質的な私のテーマです。

    主要著作
    • Brunelleschi's ram, The Burlington Magazine, vol.136, no.1101, 1994, pp. 832-34.
    • 「台座考」(『西洋美術研究』第9号、2003)
    • Light and Shadow in Sassetta: The Stigmatization of Saint Francis and the Sermons of Bernardino, in Machtelt Israëls (ed), Sassetta, The Borgo San Sepolcro Altarpiece, Leiden-Florence, 2009, 305-18.
    • 『祭壇画の解体学』(編著、ありな書房、2011)
    • 『西洋絵画の歴史1 ルネサンスの驚愕』(小学館、2013)
  • 内藤 正人
    Naito, Masato
    教授

    美学美術史学専攻
    日本美術史

    日本の近世期、江戸時代の絵画史と版画史が専門で、とくに浮世絵や琳派などの作品や作者が主要な研究対象です。このほか、物語絵や風俗画の系譜に連なる古代・中世から近・現代までの絵画作例全般についても、強い関心を抱いています。さらにその先にある問題として、世界の美術史における日本美術の位置付け、という大きなテーマにも取り組んでいます。

    主要著作
    • 『もっと知りたい歌川広重 生涯と作品』(東京美術、2007)
    • 『勝川春章と天明期の浮世絵美人画』(東京大学出版会、2012)
    • 『浮世絵とパトロン』(慶應義塾大学出版会、2014)
    • 『うき世と浮世絵』(東京大学出版会、2017)
    • 『北斎への招待』(朝日新聞出版、2017)
  • 西川 尚生
    Nishikawa, Hisao
    教授

    美学美術史学専攻
    音楽学、西洋音楽史

    W. A. モーツァルトを中心とする古典派音楽の研究。モーツァルトの手稿譜の調査を通じて、作品をめぐる諸問題(成立過程、演奏実践、同時代の受容等)を解明しようと考えています。18世紀のウィーンとザルツブルクにおける宮廷楽団、劇場、公開演奏会、楽譜出版についても研究を進めています。

    主要著作
    • 『モーツァルト』音楽之友社、2005年。
    • 「ラノワ・コレクションのモーツァルト資料」樋口隆一編著『進化するモーツァルト』春秋社、2007年、197-242頁。
    • 「モーツァルト《ト短調交響曲》K. 550の“Corrupt Passage”再考」『新モーツァルティアーナ 海老澤敏先生傘寿記念論文集』音楽之友社、2011年、 320-334頁。
    • 「芥川也寸志《交響曲第1番》の成立」『芸術学』(慶應義塾大学・三田芸術学会誌)第16号、2012年、57-82頁。
    • “Die Bassbesetzung in den Serenaden, Divertimenti und Notturni von Michael Haydn”, In Johann Michael Haydn. Werk und Wirkung, Strube Verlag, München, 2010, S. 193-206.
  • 林 温
    Hayashi, On
    教授

    美学美術史学専攻
    日本美術史

    日本の仏教絵画史が専門ですが、上古から近代に至る日本美術に通底する“日本美”の特質を究明したいと務めています。更に芸術とは何かという問いに答えを出したいと苦闘しています。

    主要著作
    • 『鎌倉仏教絵画考:仏画における「鎌倉派」の成立と展開』(中央公論美術出版、2010)
    • 『仏教美術史論集Ⅰ 様式論ーースタイルとモードの様式分析』(編著、竹林舎、2012)
    • 『仏教美術論文集3 図像学Ⅱーイメージの成立と伝承(浄土教・説話画)』(編著、竹林舎、2014)
    • 『別尊曼荼羅』(『日本の美術』433、至文堂、2002)
    • 『妙見信仰と星曼荼羅』(『日本の美術』377、至文堂、1997)
  • 藤谷 道夫
    Fujitani, Michio
    教授

    諸言語部門
    イタリア語・イタリア文学、西洋古典学、比較文学

    ダンテの『神曲』を西洋古典文学(特にラテン文学)、哲学・自然学、キリスト教神学の視点から多角的に読み込み、理解する作業を行なっています。各歌章の解読を徹底して行ない、次に、ある主題の下でそれを有機的に繋げ、作者の隠された意図をできるだけ忠実に再現することを目指しています。『神曲』の語学的解説や翻訳も同時に行なっています。学外では新宿・横浜・立川の朝日カルチャーセンターで『神曲』の講義をしています。

    主要著作
    • 『神曲』地獄篇(第1歌~第17歌)、河出書房新社、2018年。
    • ダンテ『神曲』における数的構成、慶應義塾大学出版会、2016年。
    • Shinkyoku, il canto divino. Leggere Dante in Oriente, Trento, Editrice Università degli Studi di Trento, 2000.
    • Dalla legge ottica alla poesia: la metamorfosi di «Purgatorio» XV 1-27”, «Studi danteschi», vol. LXI(1989), pp. 153-185, Società Dantesca Italiana.
    • “Leggere le poesie dall’ottica filosofica orientale/occidentale: Haru to shura di Miyazawa Kenji e La Divina Commdia (Inf.VII, XVII, XIX) di Dante Alighieri”, Congedo editore, 2008, pp. 15-26.
  • 望月 典子
    Mochizuki, Noriko
    教授

    美学美術史学専攻
    西洋美術史・芸術学

    17世紀フランス美術史・美術論。ニコラ・プッサン研究を中心に、プッサンの作品を規範として掲げた17世紀後半の王立絵画彫刻アカデミーにおける美術理論の確立とその変容に関心を持っています。画家の制作論、実際の作品とその受容、作品や画家を巡る言説、社会的文脈、美術コレクションなど、相互に絡み合う様々な要因を考察に加え、研究に取り組んでいます。

    主要著作
    • 望月典子『ニコラ・プッサン: 絵画的比喩を読む』慶應義塾大学出版会、2010年
    • Noriko MOCHIZUKI, "Le tableau d'autel du Roi: L'institution de l'eucharistie de Nicolas Poussin,'' Aesthetics (The Japanese Society for Aesthetics), no. 22, 2018, pp. 40-54.
    • 望月典子「若き国王ルイ一四世の表象: シャルル・ル・ブラン《アレクサンドロス大王の前のダレイオスの家族》」大野芳材監修『フランス近世美術叢書V 絵画と表象II』所収、ありな書房、2016年
    • Noriko MOCHIZUKI, "Mars et Vénus de Nicolas Poussin: Sa réception de l'art antique et de la poétique de Marino,'' Dix-Septième siècle (Presses Universitaires de France), no.255, 2012, pp. 341-351.
    • Noriko MOCHIZUKI, "Le regard des curieux sur les peintures dans le Paris du XVIIème siècle,'' Aesthetics (The Japanese Society for Aesthetics), no. 16, 2012, pp. 36-52.