概要

西洋史学分野の修士課程では、以下に紹介する教員の個別研究分野よりやや広い分野で、一次史料や基礎的研究文献を講読し、基礎知識の獲得を目指します。後期博士課程では、身につけた基礎知識を前提として、さらに高度な研究能力を養成します。そして、学位論文の作成を通じて研究者を育成することを目標とします。西洋史は、時間的・空間的に膨大な領域を対象とします。しかし、学部教育と違い大学院、特に後期博士課程では、学生の研究分野と教員の指導できる分野が近接していなければなりません。そういった意味から、以下に各教員の個別研究分野をやや詳しく紹介しますので、参考にしてください。

吉武憲司が専門とするのは、11・12世紀イングランドですが、大学院で担当する分野は、中世イングランド全般およびその周辺のイギリス諸島地域です。ただし、イギリスを専門とするにしても大陸史の基礎知識は必須です。神崎忠昭の専門分野は中世教会史で、特にヨーロッパ中世の人々の信心を探ることを目指しています。史料的制約があり庶民を対象とすることは難しいため、8世紀から14世紀にかけての修道士たちが著したラテン語テキストを丹念に読み込んでいます。山道佳子はカタルーニャの近代社会文化史を専門にしています。現在は18世紀後半から19世紀前半のバルセローナにおける絹を扱う手工業者を主な対象として、経済状況の変化に彼らがどのように対応したのか、当該時期に彼らの労働文化や生活文化、あるいは家族のあり方はどのように変化したのか、解散を迎える前のギルドはどのように機能したのかといった問題を、遺言書や死後財産目録、徒弟契約などの公証人文書から明らかにする研究に取り組んでいます。野々瀬浩司は、スイス及び西南ドイツの宗教改革期を対象に、宗教改革の思想的背景、神学上の諸問題、さらには領主—農奴関係の変化などを研究しています。清水明子は、ドイツ、バルカン現代史を専門にしています。現在は、ナチス・ドイツのヨーロッパ広域秩序構想と大クロアチア国民国家建設の接点における、権力関係と社会的変容の再構成に取り組んでいます。坂田幸子は20世紀初頭、マドリードを中心に展開した前衛文学運動ウルトライスモについて、その文化的・社会的背景や、他の芸術領域との相互影響関係などの面から調べています。その他に本専攻には、授業は担当しないものの、古代ローマ社会経済史を専門とする長谷川敬助教も在籍しています。長谷川敬は、特にカエサル征服後のガリアやローマ領ゲルマニアの商人、職人、運送業者が、どのような人的ネットワークを構築していたのかを、主に碑文史料から明らかにすることを目指しています。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 神崎 忠昭
    Kanzaki, Tadaaki
    教授

    西洋史学専攻
    西洋中世史

    中世ヨーロッパの人々が、何を、なぜ、どのように信じたのかに関心があります。

    主要著作
    • ジャン・ルクレール『修道院文化入門:学問への愛と神への希求』(共訳、知泉書館、2004)
    • 『ヨーロッパの中世』(慶應義塾大学出版会、2015)
    • 『断絶と新生:中近世ヨーロッパとイスラームの信仰・思想・統治』(編著、慶應義塾大学出版会、2016)
  • 坂田 幸子
    Sakata, Sachiko
    教授

    諸言語部門
    スペイン語、スペイン文学・文化

    20世紀のスペイン文学を研究しています。なかでも1920年前後にマドリードで展開した前衛文学運動ウルトライスモについて、その文化的・社会的背景や、他の芸術領域との相互影響関係などの面から調べています。

    主要著作
    • 「テオフィル・ゴーチエ、1840年のスペイン旅行」(宮崎揚弘編『続・ヨーロッパ世界と旅』法政大学出版局、2001)
    • 「越境を生きたスペイン女性作家たち -ルシーア・サンチェス・サオルニルとマリア・テレサ・レオン-」(モダニズム研究会編『モダニズムの越境-Ⅱ』人文書院、2002)
    • 「おてんば少女の輝いた時代 -スペイン女性作家たちによる児童小説-」(柴田陽弘編『文学の子どもたち』慶應義塾大学出版会、2004)
    • 『ウルトライスモ -マドリードの前衛文学運動-』国書刊行会、2010.
    • 『初歩のスペイン語('13)』(共著)、放送大学教育振興会、2013.
  • 野々瀬 浩司
    Nonose, Koji
    教授

    西洋史学専攻
    スイス宗教改革史、農村社会史

    これまで宗教改革的な新しい神学が近世ヨーロッパ社会に与えた影響について、実証的に考察してきました。特にドイツ農民戦争期の抗議書を史料として用いて、平民が抱いていた「神の法」思想の分析を行い、16世紀のスイスや西南ドイツにおける農奴制問題と宗教改革運動との関わりを研究しました。最近では、宗教改革期の戦争観や都市と宗教改革の関係についての研究を開始しました。

    主要著作
    • 『ドイツ農民戦争と宗教改革:近世スイス史の一断面』(慶應義塾大学出版会、2000)
    • 「ドイツ農民戦争期におけるチューリヒの農奴制問題について」(『西洋史学』197号、2000)
    • 「宗教改革者と農奴制:ベルンの再洗礼派の例を中心にして 」(『西洋史学』212号、2004)
    • 『宗教改革と農奴制:スイスと西南ドイツの人格的支配』(慶應義塾大学出版会、2013)
    • 「宗教改革と都市共同体」(『思想』1122号、2017)
  • 山道 佳子
    Yamamichi, Yoshiko
    教授

    西洋史学専攻
    スペイン(カタルーニャ)近代史

    スペインの中でも独自の歴史・文化・言語を持つ地域(ネーション)のひとつであるカタルーニャの近代史を研究しています。ここ数年の研究テーマは、18世紀後半から19世紀初頭のバルセローナ市の絹織物及び絹に関わる手工業の職人の世界(仕事、家族、信仰)を、職人とその妻や未亡人の遺言書・死後財産目録・結婚契約書などの史料から再構築することです。なかでも特に現在は、ストッキング製造業者に焦点をあてて調べています。授業では、これまで勉強してきた都市形成、祭り、スポーツなど、カタルーニャの社会文化史に関わるさまざまテーマや、カタルーニャの独立運動の現状などを、広く紹介しています。

    主要著作
    • 『近代都市バルセロナの形成:都市空間・芸術家・パトロン』(共著、慶應義塾大学出版会、2009)
    • 「ギルド社会における職業と家族:産業革命前夜のバルセローナにおける絹産業」(『スペイン史研究』28号、2014)
    • 「「ギルドの再評価」と徒弟制度:産業革命前夜のバルセローナにおける絹産業(1770年−1834年)を一例として」(『史学』第87巻、第1•2号、2017)
    • 『概説近代スペイン文化史』(第3章 王政復古期の文化、第16章 スポーツの文化史 担当)(共著、ミネルヴァ書房、2015)
    • Los fabricantes de medias de seda de la Barcelona pre-industrial, 1770-1808, Solà, À. (ed.), Gremios, trabajo, artesanos y género en el sur de Europa, siglos XVI-XIX, Barcelona, 2018.
  • 吉武 憲司
    Yoshitake, Kenji
    教授

    西洋史学専攻
    西洋中世史(イギリス中世史)

    11・12世紀イギリスの政治史・行政史を専門としています。特に国王行政を中心に研究を進めていますが、王権の支配に正当性を付与する権威の問題、王権と教会権力との関係などにも興味を持っています。

    主要著作
    • E.キング『中世のイギリス』(監訳)(慶應義塾大学出版会、2006)
    • B.ハーヴェー編『12・13世紀』〈オックスフォード ブリテン諸島の歴史 4巻〉(監訳)(慶應義塾大学出版会、2012)
    • The Place of Government in Transition: Winchester, Westminster and London in the Mid-12th Century', in Rulership and Rebellion in the Anglo-Norman World, ed.P.Dalton and D. Luscombe (Farnham, 2015)