概要

仏文学専攻の創設は、修士課程が1951(昭和26)年、博士課程が1953(昭和28)年ですから、すでに60年以上の歴史と伝統を有することになります。現在では、フランス人の訪問准教授を含め、常時8名前後の教員が講義と論文指導に当たっています。

担当教員の専門は、近世から現代、さらには言語学まで、幅広い分野にわたり、学生の多様な関心や要求に的確に対応できる態勢が整っています。特に修士課程のカリキュラムには独自の工夫があり、学生にはすべての設置科目を履修するように指導しています。その結果、指導教授以外の教員からも、満遍なく多彩な学問と知識を吸収することができます。偏狭な専門研究のタコツボに閉じこもることなく、常に開かれた視野でフランス文学に接する態度が培われること、それが本専攻の大きな特色の一つになっているのです。各分野の専門家による演習と研究指導は、少人数の学生を対象とするだけに密度が濃く、研究者として欠かせない知識と方法を学ぶことができることでしょう。

教員全員がフランス留学を何度も経験し、博士号を取得していることもあり、特に後期博士課程の学生には留学を積極的に勧めています。これまでに、エコール・ノルマル・シュペリウール、パリ第3大学、ニース大学、トゥルーズ大学などとの交換留学生や、フランス政府給費留学生を多数送り出しています。また、このような本格的な研究活動に必要なフランス語の運用能力を育成するために、フランス人教員による徹底したプレゼンテーションの訓練や作文指導も行われています。教員と学生の関係は、フランス風のさらりとした個人主義と、慶應義塾独自の着流し風が調和した独自のものとなっています。

仏文学専攻の修了生には、本塾をはじめさまざまな大学でフランス語・フランス文学を担当する教員になっている者が多く、加えて、文壇や詩壇などで、永井荷風以来のいわゆる三田派の伝統に連なる執筆活動を展開する小説家、詩人、批評家も少なくありません。

教員

名前/職位

専攻/専門領域/研究内容/主要著作

  • 市川 崇
    Ichikawa, Takashi
    教授

    仏文学専攻
    現代フランス文学及び思想

    1930年代のフランス文学及び思想を主な考察の対象としています。シュールレアリスト、ジャンポール・サルトル、ジョルジュ・バタイユといった当時の若い世代の文学者、思想家が、ニーチェやハイデガーの影響を受けながら、どのように「思考する主体」を問い直そうとしていたのかを考えています。

    主要著作
    • アラン・バディウ『コミュニズムの仮説』(翻訳、水声社、2013)
    • アラン・バディウ、ジュディス・バトラー、ジャック・ランシエールほか『人民とはなにか』(翻訳、以文社、2015)
    • « De "La fin du 6 février" à la naissance de Thomas l'obscur », Défi de lecture: Thomas l'obscur de Maurice Blanchot(共著、Presses Universitaires de Paris-Ouest, 2017)
    • « La Politique du mythe : Débat virtuel entre Bataille et Drieu », Cahiers Bataille, no 3, Éditions les Cahiers, 2016
    • 「時間、自己触発、固有性:超越論的感性論をめぐるジャン=リュック・ナンシーとジャック・デリダの討論」『人文学報フランス文学』, 513-15, 首都大学東京人文学研究科, 2017
  • 荻野 安奈
    Ogino, Anna
    教授

    仏文学専攻
    フランス文学(16世紀)

    専門は16世紀の散文、特にフランソワ・ラブレーです。ラブレーを試金石にして近代(バルザック、ゾラ)や現代(マルグリット・デュラス)を読み直したりもしています。

    主要著作
    • Les éloges paradoxaux dans Le tiers et Le quart livres de Rabelais : enquête sur le comique et le cosmique à la Renaissance, Tokyo, France Tosho, 1989.
    • 『ラブレー出帆』(岩波書店、1994)
    • 『ラブレーとノストラダムス』(共著、『ノストラダムスとルネサンス』岩波書店、2000)
    • 『ラブレーで元気になる』(みすず書房、2005)
    • ノエル・デュ・ファイユ『田園閑談』(翻訳、『フランス・ルネサンス文学集2』白水社、2016)
  • 小倉 孝誠
    Ogura, Kousei
    教授

    仏文学専攻
    近代フランスの文学と文化史

    近代フランス文学を文化史的に読み解くというのが基本的なスタンスで、その際に歴史、都市、風景、オリエンタリズム、身体、病理、ジェンダーなどを主要なテーマにしています。また他方で自伝、回想緑、日記といった内面性の言説にも関心を抱いています。

    主要著作
    • 『身体の文化史』(中央公論新社、2006)
    • 『恋するフランス文学』(慶應義塾大学出版会、2012)
    • 『革命と反動の図像学』(白水社、2014)
    • 『写真家ナダール』(中央公論新社、2016)
    • 『ゾラと近代フランス 歴史から物語へ』(白水社、2017)
  • 片木 智年
    Katagi, Tomotoshi
    教授

    仏文学専攻
    おとぎ話論、17世紀フランス文学・演劇

    17世紀フランス演劇シーン及びに演劇機構の研究から出発してフランス旧政体下での表象芸術の社会的意味を問うことにたずさわってきました。又、現代社会の広義の演劇、集団表象も興味の対象です。近年はそれに加えて民間伝承、おとぎ話論にも手をそめています。おとぎ話的モチーフが文学や映画・舞台、ゲームなどにとどまらず、現代社会の様々なメディアを通してどんなふうに展開しているかも重要な研究テーマと考えています。

    主要著作
    • 『ペロー童話のヒロインたち』(せりか書房、1996)
    • 『星の王子さま学』(慶應義塾大学出版会、2005)
    • 『少女が知ってはいけないこと:神話とおとぎ話に描かれた〈女性〉の歴史』(PHP研究所、2008)
  • 喜田 浩平
    Kida, Kohei
    教授

    仏文学専攻
    フランス語学

    主にフランス語の文学テクストを対象とし、「論証意味論」と呼ばれる方法論を用いて、意味論と語用論の境界領域の諸現象を分析しています。

    主要著作
    • Cognition et émotion dans le langage(共同編集、慶應義塾大学出版会、2006)
    • 『プチ・ロワイヤル和仏辞典 第3版』(執筆協力、旺文社、2010)
    • « Prédicat argumentatif et concept ad hoc », Travaux de linguistique 70, 2015
    • « L'anaphore conceptuelle au prisme de la Théorie des Blocs Sémantiques », Discours 19, 2016
    • « L'argumentativité de la métaphore dans une sémantique argumentative », Marc Bonhomme et al. (dir.), Métaphore et argumentation, Editions Academia, 2017
  • 岑村 傑
    Minemura, Suguru
    教授

    仏文学専攻
    近現代フランス文学

    20世紀の作家ジャン・ジュネの研究に軸足を置いていますが、ほかへの興味も尽きません。刑罰制度の表象については身を入れて調べていますし、「三面記事」、「帰還」、「告白」、「描写」など、ひとつの主題をめぐって複数の作品を読み解いていくことにも愛着をもっています。

    主要著作
    • 『フランス現代作家と絵画』(共編著、水声社、2009)
    • ジュネ『公然たる敵』(共訳、月曜社、2011)
    • Dictionnaire Jean Genet(共著、Honoré Champion、2014)
    • 「ミシェル・ヴィユシャンジュを読むジュネ」(『藝文研究』第107号、2014/第108号、2015)
    • タハール・ベン・ジェルーン『嘘つきジュネ』(単訳、インスクリプト、2018)
  • 宮林 寛
    Miyabayashi, Kan
    教授

    仏文学専攻
    近代フランス文学

    19世紀フランス詩全般。ベルギーのフランス語文学。

    主要著作
    • Mallarmé(共著、Editions InterUniversitaires、1998)
    • Mallarmé ou l'obscurité lumineuse(共著、Hermann, 1998)
    • 『ドゥルーズ 千の文学』(共著、せりか書房、2011))
    • ジル・ドゥルーズ『記号と事件』(翻訳、河出文庫、2007)
    • マリ・ゲヴェルス『フランドルの四季暦』(翻訳、河出書房新社、2015)