私が専門としているのはキリシタン史です。フランシスコ・ザビエルの所属するイエズス会というカトリック修道会の前近代の布教方法をおもに研究しています。
イエズス会は、その布教方針において「適応」(accomodatio)という概念を伝統的に重視しています。適応には、二つの方向性があります。ひとつは、宣教師が布教地における文化的、社会的諸要素に自らを適応させることです。布教地の言語を習得することもこれに含まれます。第二は、キリスト教をいかなるものとして説くかということです。これにはさらに二つの方法があります。ひとつは、キリスト教の持つ諸要素を選択的に説くことです。教義すべてを説くのではなく、当面は一部を説くことを控えることも含まれます。もうひとつは、キリスト教の持つ諸要素のうち、教義的に変形可能なものを変形させることです。