講演会の概要:
フッサールが初期から晩年まで研究草稿を書き継いできた時間をめぐる考察は、「生き生きした現在の謎」(フッサール)の問題が提起されるに至って、意識対象の構成分析を手法とする現象学的反省理論の限界に関わるものと解釈されてきました。この解釈のドイツにおける代表的論者は Lebendige Gegenwart, 1966 の著者クラウス・ヘルト(Klaus Held)であり、我が国においては斎藤慶典らがその解釈を下敷きに現象学をエマニュエル・レヴィナスやジャック・デリダら戦後フランスのポスト構造主義哲学の問題圏へと展開しました(斎藤慶典『思考の臨界――超越論的現象学の徹底』、2000年、ほか)。
こうした動向に対して近年、佐藤大介(岡山大学)が「反省の問題は本当に問題なのか――フッサール初期時間論の再検討」(日本哲学会編『哲学』、第70号、2019年)などで精力的に反論を展開しています。そこで、この機会に佐藤と斎藤両者が直接に議論を交わすことで、フッサール現象学において何が起こっていたのか、そこで問題とすべきは何なのか、その問題の射程と展開の可能性はいかなるものなのか、といった点を参加者と共にあらためて考えるワークショップを企画しました。司会は、日本現象学会、フッサール研究会などで現代日本の現象学研究の活況を牽引する植村玄輝(岡山大学)が務めます。
ワークショップは、まず佐藤と斎藤がそれぞれ40分ずつ提題を行ないます。休憩を挟んで後半の一時間は、すべてを提題者と会場との議論に充てます。