大学における外国人留学生を対象とした日本語教育では、専門分野における学習・研究を目的とする日本語学習者に対して、短期間のうちに論述的な文章を理解し、作成する能力を養成することが要求されます。日本語の母語話者の言語習得とは異なる外国語としての日本語習得過程で、日本語学習者が母語話者に近いレベルで論理的な文章の読解・作成を行う力を身につけていくためには、学習者自身の意欲はもとより、専門分野における学習・研究を支える日本語教育の方法の体系化・効率化が非常に重要だと考えられます。そのような教育上の大きな目標を見据えて、専門分野における日本語教育で重要となる論理的な文章の読解・作成のための基礎的研究を進めています。研究の関心は主に二つあります。一つは、論述文に代表される論理的な文章の特徴とは何かを探るために、文章のジャンル判別に寄与する言語指標を、計量的手法を用いて分析し、論述的文章に特徴的な指標を探すことです。多変量解析によって指標として有効だと実証されたものには、助詞相当句や接続助詞などの複合辞や複合動詞(後項動詞)があります。もう一つは漢語専門用語の研究です。非漢字圏の日本語学習者にとって、専門分野で学ぶ漢語専門用語は数も多く、学習上、大きな負担になると考えられます。漢語語彙の語構成については、専門用語に限らず、日常用語でも、二字漢語を中心にして、三字漢語、四字漢語というように見ていくと、その語構成上のパターンに規則性があることに気づきます。例えば、経済学分野の三字漢語、四字漢語の専門用語を見ると、少数の共通した二字漢語の語基によって構成されていることがわかります。このような研究結果を基礎データとして教材を開発することによって、非漢字圏の日本語学習者にとっての専門用語の学習の効率化が図られると考えられます。最終的には、上記の研究成果を教育現場に還元し、専門日本語教育における体系的教授方法の構築につなげることを目指しています。
(2019/04/01)